ここ数日、日中は暑いですが、夜になるとかなり冷え込む毎日の札幌です。

その影響なのか病院前の緑地帯にある植木の葉々が、先週から変色が始まりました…紅葉の季節です。

本州はまだ真夏なのに、札幌はもう秋です…なんか平年よりも早い気がします。

もしかして、今年は寒くて雪が多いのでしょうかね?

さて、今回は子犬の不妊手術を行った際にみられた疾患についてです。

通常、犬の子宮は双角子宮と云って人とは異なり、「Y」字状に子宮が左右に分かれています。

二つの角のように分かれているので双角子宮と呼びます。

Y字の両側上部端に卵巣があります。そして、Y字の下部に子宮体・子宮頸管部が存在します。

下の画像は犬の正常な子宮構造図です。「犬の病気」より一部抜粋引用させていただきました。

クリックすると拡大します。以下、専門用語が使われますので参考までに….。

uterus

その双角子宮の片側が先天的に欠損 or 低形成している個体が稀にいます。

今回はそんな片側子宮欠損 or 低形成に遭遇した際のお話です。

手術の方法は個人差がありますが、基本な手技は共通しています。仰向けにした状態で臍部後方から恥骨前縁上部まで正中切開します。

腹膜を切開し、子宮吊り出し鉤で子宮角を腹腔外へ牽引します。そして、左右の卵巣堤索(腎臓と卵巣をつないでいる靱帯)と卵巣動静脈を結紮(糸で縛る)して切断します。

私の場合は、左の子宮角から牽引・結紮・切断を行い、次に右へとアプローチをしております。

そして、いざ右の子宮を牽引しようと子宮吊り出し鉤をつかって探しても見つからないのです。

時々、ちょっと変な位置に入り込んでしまっている時があるので、その時は逆側の子宮角を牽引し、子宮体部を露出(Y字のちょうど分岐する所)し、そこから目標の子宮角へとアプローチをすれば全く問題がありません。

今回は、探せども探せどもどこまでが子宮角でどこからが子宮体なのかわかりませんでした。

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片側の子宮角がない!!うーん、どうしよう…でも子宮間膜があるので、それをとりあえず辿ってみようということになり、卵巣があるのか無いのかを確認することにしました。

子宮はありません(少し線維質の管様のものは存在)が、卵巣はしっかりとありました。

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とりあえず、卵巣を残しておくと発情が来てしまいますので、卵巣を常法にて結紮・切断し、子宮体部の血管を2重結紮し、切断しました。

いざ取り出してみると、子宮体から右へとなんとなく細い線があるので、おそらくはそれが子宮になるべきところであったのかと思われます。下の写真を見る限り、なんかあるように見えますが、これは子宮間膜という膜がよれて管様に見えるのと子宮体から卵巣へ向う血管が合わさったものだけで、実際には1mmにも満たない細い結合組織のようなスジしかありませんでした。今回、病理検査には出していないので欠損なのか低形成なのかは不明ですが、どちらにしても先天的な奇形があったということです。

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ちなみに、この子宮角の欠損・低形成などの肉眼的子宮の異常を示す割合は、0.05%程度みられるとのことです。

病理学的に云うと、子宮は発生学的に左右の中腎傍管(ミューラー管)から形成されます。この発生段階において、ミューラー管の発達に何らかの障害が発生すると、子宮に種々の奇形が発生するようです。特に犬では、単角子宮、あるいは子宮角の部分的融合などの奇形が多いと報告があります。そして、時々、腎臓の欠損もみられるようです。

私も話には聞いていましたが、実際に自分が手術をしていて遭遇したのは初めてでした。

ちなみに、手術をした犬はちゃんと元気にすくすくと成長をしております。現在の所、何らかの奇形による問題は発生していません。ただ、最近流行の純血種同士を掛け合わせた雑種犬なので、この流行がいつまで続くのか不明ですが、今後も同じような奇形に遭遇する可能性は低くないのかもしれません。