今日は朝から晴れたり、雪が降ったりとなんだか落ち着かない天気ですね。

それでも寒さも幾分和らぎ、札幌も少しずつ春が近づいている感じです。

4月から狂犬病予防注射が始まりますが、今年はそれと併せて雪解けあとのマダニ予防をどうするかも決めなくてはいけません。北海道は気温が低く、本州と比べてマダニ予防はあまり大々的には行われおりません。

なぜマダニ予防も併せて考えなくてはいけないかと云いますと、既にワイドショーやニュースなどで聞いた事があるとは思いますが、今年に入り、日本国内においてマダニを媒介として人へ感染してしまうウイルス感染症(SFTS)を考慮に入れる必要性がでてきたからです。

では、そのウイルス感染症とはいったい何なのか?様々なメディアで紹介されておりますが、この度、マダニ予防薬を販売しています共立製薬様がまとめて下さったQ&Aがありますので、許可をいただいて転載したいと思います。

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Q1.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とはどのような病気ですか?

マダニが媒介する新しいウイルス感染症で、ヒトにおいて発熱、嘔吐・下痢などの症状がみられます。また、血液検査では血小板減少や白血球減少、肝酵素値の上昇などがみられます。

Q2.SFTSの原因ウイルスは?

ブニヤウイルス科フレボウイルス属SFTSウイルスです。エンベロープ(+)の1本鎖RNAウイルスで、酸や熱に弱く、消毒用アルコールなどの一般的な消毒剤で消毒可能です。

Q3.SFTSウイルスの伝播経路は?

マダニが媒介する感染症であり、中国においてはフタトゲチマダニが主な媒介者であるとされていますが、オウシマダニからもSFTSウイルスが検出されていることからその他のマダニも媒介者となる可能性があります。一方、蚊による媒介については否定されています。

Q4.SFTSの症状は?

ヒトにおいて、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸器症状(咳、咽頭痛)、出血症状(紫斑、下血)等の症状が認められます。致死率は高く、およそ12%とされています。

Q5.SFTSの潜伏期間はどのくらいですか?

マダニに咬まれてから6~14日程度と考えられています。

Q6.SFTSの発生地域はどこですか?

国内においては広島、山口、愛媛、長崎、宮崎、佐賀、高知でSFTS症例が確認されていますが、SFTSウイルスを媒介するマダニは日本全国に分布していることからこれら以外の地域でも発生している可能性があります。

海外においては中国でSFTSウイルスが確認されており、安徽省、河南省、湖北省、浙江省、江蘇省、遼寧省、山東省で発生がみられています。またアメリカのミズーリ州においてもSFTSウイルス近縁のウイルスによるSFTS様の症例が報告されています。

Q7.ヒトにおけるSTFSウイルス感染率はどのくらいですか?

中国の流行地における調査では、健常者の0.8~3.8%から抗SFTSウイルス抗体が検出されています。
一方、国内における抗体調査の報告はなく、感染率は不明です。

Q8.SFTSの発生に季節性はありますか?

はい。中国におけるSFTSの発生はマダニの発生する季節に一致し、3~11月に発生し、そのピークは5~7月です。(札幌近郊では、4月下旬~10月にかけて、ピークは6~7月頃です)

Q9.ヒト以外の動物にも感染しますか?

中国における血清疫学調査では山羊、牛、羊、豚、鶏および犬より抗SFTSウイルス抗体が高率に検出されています。また、牛、山羊、犬、猫に寄生するマダニ、およびこれら動物からもSFTSウイルス遺伝子が検出されていますが、感染源となる動物は特定されていません。
一方、国内における抗体・遺伝子調査の報告はなく、感染状況は不明です。

Q10.犬におけるSFTSウイルス感染率はどのくらいですか?

SFTS流行地である江蘇省での調査では6.4%の犬が抗SFTSウイルス抗体陽性でした(N=125)。一方、湖北省での調査では55.0%の陽性率でした(N=11)。尚、中国の農村部ではマダニの寄生率が著しく高く、犬や家畜に数百のマダニが寄生していることも珍しくありません。この高いマダニ寄生率が高い抗体保有率に関連していると考えられます。

一方、国内における調査報告はなく、感染率は不明です。

Q11.動物でもSFTSが発症しますか?

国内外において動物のSFTSウイルス感染による発症の報告はありません。したがって、現時点ではヒトのみの病気であると考えられています。

Q12.SFTSの予防法はありますか?

マダニがSFTSウイルスを媒介することから、マダニの寄生を予防することが重要だと考えられます。犬や猫にマダニが寄生する可能性のある場所へ行く場合などは、マダニの駆除剤を使用しておくことで本ウイルスの感染リスクを低減できると考えられます。

現時点では、動物がヒトと同様にSFTS症状を示すといったことや、SFTSウイルスが動物を介しヒトに感染するといったことは確認されておらず、いたずらに怖がる必要性はないと考えられます。ですが、念のためSFTSウイルスの感染を防ぐためにも、またバベシア症をはじめとするマダニ媒介性感染症の予防のためにも犬猫へのマダニ寄生予防は重要です。そのためには、マダニ駆除剤を定期的に投与することが最も効果的な防除策と考えられます。

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つまり、現時点では犬がマダニに刺されても発症しないが、犬が連れてきたマダニが飼主を刺してしまった場合、このウイルス感染症に罹ってしまう可能性がありますので注意しましょうということです。

気温にも左右されますが毎年、ゴールデンウィーク前後を境にマダニに刺されて来院される患者様が増えます。マダニは刺されてからでも除去が可能ですが、最悪の場合は傷跡が残ったり、バベシア症など病気を犬が発症する危険性がありますので、刺される前に駆除する必要があります。

極論を言うと、草むらに行かない or  外出しなければ、マダニに接触することはありません。

マダニ予防について、ご相談がありましたら気兼ねなくお問い合わせ下さい。

関連記事:国立感染研究所 、 厚生労働省(SFTSに関するQ&A)