当院で実際に治療を受けられた犬・猫の歯科症例写真です。処置前と処置後の状態を比較してご紹介します。
当院では歯石除去を含め、すべての歯科治療をマイクロスコープ下にて施術しています。
また、歯周病、歯内治療や歯周外科、歯周再生治療等の一般的な動物病院では治療が困難な症例についても対応が可能です。

※症例写真・治療内容について
・本治療は各患者さま固有の症例に対応したものであり、他の方への治療結果を保証するものではありません。
・病状により希望された内容通りに治療が出来ない場合があります。
・麻酔にはリスクが伴います。術中・術後に予期せぬ死亡の可能性が少なからずあります。
・再生治療はすべての患者様に対して適応されるものではなく、最低でも2回以上の全身麻酔下での治療が必要になります。

#含歯性嚢胞 #歯原性嚢胞 #嚢胞 #未萌出歯 #短頭種 #埋伏歯 #下顎第1前臼歯 



主   訴 皮膚にしこりが出来たとの主訴にて来院された際の身体検査にて下顎の歯肉が嚢胞化しているのを発見。皮膚腫瘤切除時に歯科レントゲン検査、並びに嚢胞化していた場合は嚢胞の除去&埋伏歯の抜去
動   物 年   齢 3歳1か月
種   類 ビション・フリーゼ 費   用 11万(術前検査含まず)
治 療 方 法 スケーリング、抜歯、嚢胞摘出、下顎骨掻爬
コ メ ン ト 今回、皮膚にしこりが出来たとの主訴にて来院された際の身体検査時に左側下顎の歯肉が腫れているのを発見しました。歯肉の色がピンク色から淡灰色に変色しており、触診すると波動感を感じる初見が得られました。本患者は生後7ヶ月齢時に去勢手術時に乳歯(primary tooth)抜歯を実施していました。その時のx-ray写真を確認すると該当部位に下顎永久第1前臼歯があることが確認されました。手術時の外観写真を確認するとちょうど下唇小帯(inferior labial frenum)の付着部に位置していました。反対側の第1前臼歯は萌出していました。この事から下顎第1前臼歯の未萌出歯(impacted tooth)による含歯性嚢胞(dentigerous cyst)である可能性が強く示唆されました。皮膚腫瘤の切除時に麻酔をかけるので、同時に歯科x-rayにて確定診断を行い、歯科処置を行うことにしました。これは所謂、完全な見落としです。恥ずかしながらその当時の知識・技術は今とは比べ物にならないほど未熟(獣医歯科学的知識のみ)だったので、x-ray検査の読影や放置することに対する予後判定がしっかりと出来ていなかったのだと思われます。以前のcaseレポートに未萌出の歯に対するレーザーによる造窓術を紹介していますが、時期的には本症例の方が1年近く前で歯科用x-rayも導入間もなく、かつマイクロスコープもなかった時代になります。
x-ray検査では左下顎の第1前臼歯を犬歯の遠心側と第2前臼歯の近心側を巻き込むように類円形状骨欠損が確認されました。嚢胞の底部に埋伏歯が確認できます。拡大鏡下にて嚢胞に針で穿刺吸引を行った所、赤褐色の液体(出血性液hemorrhagic fluid)が採取されました。この事から歯原性嚢胞と確定しました。液体の細胞診を行った所、殆どは赤血球でしたが、単核マクロファージ(mononuclear phagocytes)と貪食された粒状ヘモジデリン色素(hemosiderin)とコレステロール結晶(cholesterol crystals)が確認されました。コレステロール結晶は、炎症に伴う細胞の崩壊と脂質の蓄積のプロセスにより成分が濃縮され、溶解度を超えたコレステロールが針状(または板状)に結晶化したものと言われています。歯原性嚢胞の特徴的な所見です。
手術方法は単純です。嚢胞の直上を切開し、廃液後に歯原性上皮(odontogenic epithelium)を剥離子を使って丁寧に剥離します。細胞が残っていると再発することがあるので歯原性上皮(嚢胞壁)を剥離したあとは切削機で骨の表層を一層削る事が再発防止につながります。
予   後 本症例は、未萌出歯に対する嚢胞形成とその内部に歯が含まれているので、含歯性嚢胞というのは確定診断になります。嚢胞の中心に位置している第1前臼歯は抜歯になりますが、その前後の歯である犬歯と第2前臼歯周辺の骨欠損は、嚢胞液量の増加に伴う周辺骨への圧迫が原因で骨吸収が起こったものである為、今回のように根尖が露出していない場合は抜歯せずに、圧迫を解除すれば骨がもとに戻る事が多いです。しかしながら、嚢胞が著しく巨大で根尖が露出していたり、動揺が激しい場合は残念ながら抜歯になります。今回は発見が早かったですが、進行した場合は切歯-犬歯-第2前臼歯までを抜歯しなくてならなくなる事もあります。この疾患は、早期発見が肝となります。
原因となっている未萌出歯と嚢胞上皮壁を摘出すれば治りますが、再発するケースもある為、半年後~1年後にはx-ray検査による欠損した骨が治っているか確認することが重要になります。
因みに、犬では、未萌出歯が含歯性嚢胞を引き起こす症例は29~49%に及び、最も多く発症する歯は下顎第1前臼歯(約84%近くを占めるという2024年の大規模研究報告がある)と犬歯と言われています。また、2歳以上3歳未満の犬で特に多く見られめられます。臨床的には、含歯性嚢胞は肉眼で明らかな歯の欠損として現れ、場合によってはその部分の口腔内腫脹がみとめられます。通常、粘膜の炎症や侵食は認められません、典型的な放射線学的所見は、未萌出歯の歯冠を囲む境界明瞭な皮質を伴う単房性の円形放射線透過像です。治療には、未萌出歯の抜歯、嚢胞内壁の完全な摘出です。また、嚢胞が大きく骨折のリスクが高い場合は、先に造窓術を行い、嚢胞液による圧迫を解除し、ある程度骨が出来上がってきた後に嚢胞摘出を行う術式も効果的な治療法として報告されています。ボクサー、パグ、シーズー、ボストンテリアは未萌出歯に関連する嚢胞性病変を呈する可能性が最も高いという研究報告があります。所謂、短頭種は好発犬種です。また、歯列異常を伴う小型犬も多いです。当院で診断・治療したことのある犬種は、シーズー、チワワ、ビション・フリーゼです。

※治療当時の費用であり、病状や処置内容により費用が異なる場合がございます。
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