繁忙期が終わり、やっとブログの執筆ができるようになりました。

今年に入ってから戦争が始まり、燃料や原材料高騰による様々な値上げ、インフレ等、社会経済を取り巻く環境が日々目まぐるしく変化しており、まだまだ予断が許せない状況が続いております。
こういう状況ですので、中にはペットへの支出を抑えざるを得ない状況になっている方も多数おられ、それは致し方がないことだと思っております。ゆとりができる状況であれば、再びケアをしてあげてください。

基本に人の生活が第一です。

さて、前回の更新から7カ月以上が経過してしまいました。
今回の症例は、毎年欠かさず定期健診を行っていたにも関わらず発見できずに突如発生した症状です。
健診といっても、当院では身体検査と血液検査が主体になっており、人間ドックのようにすべての検査を行ってはおりません。年齢や犬種、症状等によりレントゲン線検査、超音波検査、尿検査等をオーダーメイドで個別に行っております。
健診に割ける時間が通常診察時間内では中々取ることが難しい為、まずは身体検査と血液検査を行い、そこで異常があった場合に精査の為、次の検査を実施していくという手順を数年前より取らさせていただいております。

今回の症例は、毎年血液検査と身体検査を行っていたのですが、すべての数値が正常であり、何も症状がなかった子がある日突然、嘔吐の後、食欲元気の喪失が認められ、来院されました。

急性の消化器症状の為、腹部レントゲン検査を実施したところ、肝臓領域に多数の不透過物が確認されました。

この時点で胆石症と診断し、血液検査と超音波検査を実施しました。血液検査は各種肝酵素の著しい上昇、CRP(炎症マーカー)の上昇が認められ、胆石に関連した急性の肝細胞障害が発生し、その結果、嘔吐をしたと判明しました。

超音波検査では胆嚢壁は肥厚にしており、胆嚢内に石垣状の高エコー源性物(胆石)が多数充満してしました。幸いにも胆石が閉塞を起こしていたわけでなく、急性の胆嚢炎・肝炎と診断しました。

基本的に胆嚢粘液嚢腫と胆石症の治療は外科が根治療法になります。
ただし、全身状態が悪い中での手術は悪手ですので、抗生剤や消炎鎮痛剤、制吐処置、補液などの内科的な治療を行い、症状が改善した後に麻酔下にて胆嚢摘出の手術を実施します。

今回も同様に全身状態が快復した後、胆嚢摘出を行いました。
摘出した胆嚢を剪刀で切開し、開いてみるとびっしりと胆石が詰まっておりました。

摘出後の経過はすこぶる良好であり、胃腸障害も消失し全快しました。
こんな胆嚢だったのに症状が全くなかったのが不思議です。通常、痛みを伴うことが多いです。

本患者は肝機能の指標の1つであるTBA(総胆汁酸)には異常がなく、肝生検の病理検査結果はも特に問題はありませんでした。

今回は身体検査と血液検査では全く診断がつかず、かつ重症化するまで何も症状を示さなかったという症例でした。

ただ、毎年レントゲン検査をしていたとしても、胆石がレントゲンで見えるようになるにはそれなりの密度と量が必要であり、超音波検査以外での早期発見は難しいと思われます。

上述したように日常診察の中で、健康診断として全身スクリーニング検査の実施は時間的に難しく、高齢の動物ではせめて血液検査とレントゲン検査(胸部・腹部)のセットしか厳しいです。症状がある場合は時間を割いて診察しますが、日中の「手術・検査の時間枠」の殆どは手術で埋まってしまっている為、健診の為に時間を取ることができません。その為、どうしても複数日にわたっての分割診察になってしまいます。

胆石症や胆嚢炎には、腹痛、嘔吐・下痢などの胃腸障害、食欲・元気の低下がほぼ共通して認められます。

もし、一過性と思われる症状であっても、度々繰り返し起きたりしている場合は、腹部レントゲンや超音波検査の実施を強く推奨いたします。