当院で実際に治療を受けられた犬・猫の歯科症例写真です。処置前と処置後の状態を比較してご紹介します。
当院では歯石除去を含め、すべての歯科治療をマイクロスコープ下にて施術しています。
また、歯周病、歯内治療や歯周外科、歯周再生治療等の一般的な動物病院では治療が困難な症例についても対応が可能です。

※症例写真・治療内容について
・本治療は各患者さま固有の症例に対応したものであり、他の方への治療結果を保証するものではありません。
・病状により希望された内容通りに治療が出来ない場合があります。
・麻酔にはリスクが伴います。術中・術後に予期せぬ死亡の可能性が少なからずあります。
・再生治療はすべての患者様に対して適応されるものではなく、最低でも2回以上の全身麻酔下での治療が必要になります。

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主   訴 以前に当院の身体検査において右上顎第四前臼歯の破折があることを指摘。その後、右眼の下が腫れているとの主訴にて来院。破折による露髄を確認。抜歯ではなく、歯を温存する治療を希望
動   物 年   齢 8歳6か月
種   類 ウェルシュ・コーギー・ペンブローク 費   用 22万(術前検査含まず)
治 療 方 法 歯内治療、Laser activated irrigation(LAI)、歯冠修復、スケーリング
コ メ ン ト 今回、歯が折れ(fractured tooth)て露髄(exposed dentin and pulp)してしまった右上顎第四前臼歯は、列肉歯といって物を噛みちぎったり、砕いたりする機能歯と呼ばれる大切な歯です。鹿の角や蹄、骨、おもちゃ、ヒマラヤンチーズなどハサミで切れない硬い物をかじる事によって破折が起きます。犬の前臼歯は山型の構造をしており、かつ、エナメル質の厚さは人の1-3mmと比べ、その1/10の厚さ(0.1-0.3mm)しかありません。硬い物をかじると一点に力が集中し、負荷が上外側方向に向かうため、エネメル質だけでなく象牙質を含んだ平板状に歯が割れるリスクがあります。
今回の場合、昔に硬いもの食べていたかもとのことでした。歯の破折が歯髄にまで達し露髄していた為、複雑性破折と診断しました。露髄した所から細菌が歯髄内に侵入し、歯髄感染性を起こした結果、根尖部に炎症が生じて(apical lesions)、根尖近傍の上顎骨の一部が融解(根尖部フェネストレーション)し、軟部組織に炎症を起こし、顔が腫れたと考えます。
治療は、感染源の除去です。硬いエナメル質にバーで孔を開けて(endo access hole)、ラバーダム防湿で保護した上、感染した歯髄を取り除き、根管内を次亜塩素酸ナトリウムで徹底的に殺菌・洗浄、その後、再び感染が起きないように詰め物(Bio-C sealerやgutta-percha point)を根管内に充填します。バーで削った歯質をコンポジットレジン(CR)で埋めて完全に閉鎖します。その後、歯冠のエネメル質や象牙質も破損してるので、CRで綺麗に修復・研磨して終了になります。要約すると「歯に穴を開けて中身を綺麗に洗浄し、詰め物をして終わり」なのですが、人と違って動物の場合は1回で終わらせる必要がある為、治療には相当な時間かかります。
予   後 歯内治療、または根管治療の肝は感染源の除去です。壊死した組織を取り除き、歯髄内の菌を殺菌し可能な限り減らす必要があります。根管の形状は丸ではなく、歪です。その為、ファイルという細いドリル状の道具をつかって根管を拡大することで、洗浄液が入るスペースの確保と感染歯髄の除去を行います。消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)による洗浄が一番重要で、これに結構な時間がかかります。ましてや、根尖部からの出血がとまらなかったりすると止まるまで色々な処置が必要になるので終了するまでにかなり時間がかかります。時間短縮と確実な殺菌を行いたいので、当院では根管洗浄にEr:YAGレーザーを使います。根管内にレーザーを照射することで、キャビテーション効果という現象(レーザーが水に吸収されることで起こる蒸気泡の生成とその破裂)が起きます。このキャビテーション効果により、強力な衝撃波と高速の水流が発生し、複雑で狭い根管内の隅々まで届き、殺菌と根管内に残っている削りカスなどのデブリの除去が行えます(Laser activated irrigation)。イニシャルトリートメント(根管治療を初めて行う事)の成功率は非常に高いのですが、根尖部に起きている炎症が改善するかどうかは経過を見ていく必要があり、それを見ないことには上手く出来たかどうかがわかりません。顔の腫れが引いたり、痛みが取れていれば一応成功と言えます。当院では術後6ヶ月後と18ヶ月後に全身麻酔下にて歯科レントゲン検査を行い、根尖の状態を確認します。手術が上手くいっていれば根尖部病変(apical lesions)と呼ばれる骨が黒く抜けている箇所が治癒してきて、骨に覆われて黒い病変が消えていきます。逆に進行する場合もあるため、やって終了ではなく、治療経過をしっかりと追っていく事が重要となります。ですので、歯内治療は最低でも3回の全身麻酔下での処置が必要になります。人の場合は無麻酔で検査できますが、動物の場合は難しいです。CBCTというCTがあるとより高い精度の評価が可能です。当院も歯科用CTを来年中には導入したいと考えています。

※治療当時の費用であり、病状や処置内容により費用が異なる場合がございます。
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