当院で実際に治療を受けられた犬・猫の歯科症例写真です。処置前と処置後の状態を比較してご紹介します。
当院では歯石除去を含め、すべての歯科治療をマイクロスコープ下にて施術しています。
また、歯周病、歯内治療や歯周外科、歯周再生治療等の一般的な動物病院では治療が困難な症例についても対応が可能です。
※症例写真・治療内容について
・本治療は各患者さま固有の症例に対応したものであり、他の方への治療結果を保証するものではありません。
・病状により希望された内容通りに治療が出来ない場合があります。
・麻酔にはリスクが伴います。術中・術後に予期せぬ死亡の可能性が少なからずあります。
・再生治療はすべての患者様に対して適応されるものではなく、最低でも2回以上の全身麻酔下での治療が必要になります。
#歯折れ #破折 #根尖性歯周炎 #精密根管治療 #歯内治療 #LAI
主 訴 | 上顎の前歯が2本欠けているのに気付いた |
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動 物 | 中型犬 | 年 齢 | 12歳 |
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種 類 | 雑種 | 費 用 | 10万 |
治 療 方 法 | 切歯精密根管治療(切歯1本)、コンポジットレジン歯冠修復(2本)、Er.YAGレーザー根管洗浄(LAI:Laser Activated Irrigation) |
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コ メ ン ト | 上顎の切歯が2本欠けて(破折:Fractured tooth)おり、内1本はエネメル質が完全に剥離し、象牙質(dentin)が露出していました(単純性破折)が、露髄(歯の内部にある神経や血管を含む組織「歯髄」が、歯の外傷などによって歯の表面に露出する状態)はしていませんでした。しかしながら、もう1本は歯髄(pulp)が露髄していました(複雑性破折)。いつ破折したかは不明で気がついたら歯が欠けているという状態のため、露髄している箇所から歯髄を介して感染している可能性がありました。 治療の選択肢として、露髄歯に関して1回の治療で終わらせるのであれば抜歯、非露髄歯はコンポジットレジン(CR)による歯冠修復、歯を温存するのであれば感染した歯髄を抜髄し、根管を洗浄し封鎖する歯内治療を提案しました。飼主様は歯の温存を希望された為、歯内治療を行いました。 レントゲン検査にて露髄歯の根尖部に骨吸収病変(Apical lesions)が確認され、根尖性歯周炎を呈している事が判明しました。隣接歯にも動揺の骨吸収洋所見がみられましたが、シェブロンサイン(Chevron sign:歯の根尖(歯根の先端)における歯根膜腔の広がりがV字型またはV字型に似ていることを示すレントゲン写真所見)と呼ばれ、病気の兆候ではありません。 歯科用ファイル(細い針金状の器具)を根管の奥(根の先)までスムーズに到達させるための作業(Negotiation)を行い、ファイルのサイズを大きくしながら次亜塩素酸にて洗浄するスペースを確保します。拡張した根管を埋めるためバイオシーラー(Bio-sealer)を根管内に注入し、ガッタパーチャーポイント(Gutta-Percha Points:根管の空間を埋めるために使用される材料)を入れて空間を閉鎖します(根管充填)。最後にCRにて歯冠修復します。作業終了後のレントゲン検査にて根尖部からシーラーパフ(sealer puff)と呼ばれるBio-sealerが漏れ出ている所見が確認されました。これはしっかりと密封されている証であり、Bio-sealerは時間経過ととも吸収されるため問題ありません。 切歯における歯内治療の難点は、隣接歯との距離が短く、かつ歯が折れて短くなってしまっているのでラバーダム防湿(ゴムのシートを使って治療する歯だけを口の中から隔離し、唾液や細菌、器具の侵入を防ぐ)をするのにちょっとしたコツがいります。こういった技術は教科書には載っていません。その為、福岡や東京等に出向いて技術を学んでおります。 |
予 後 | 歯の破折は日常的によく診られます。犬では切歯や犬歯、上顎第4前臼歯が好発部位です。破折における初回根管治療の成功率は一般的に高いです。しかしながら100%ではなく、厳密な基準では約82%、緩やかな基準では約92.6%と言われています。術前にレントゲン透過像があった為、成功率は80%になります。しっかりと治療できているかの判断として、術後6ヶ月後と18ヶ月後にレントゲン検査による透過像の確認が必要になります。したがって歯内治療を行うには初回を含め最低限3回の麻酔ないし、鎮静処置が必要になります。 今回の場合、いつ破折したのか時期が不明です。数週間や数ヶ月前の可能性もあります。麻酔下でのレントゲン検査にて根尖病変が起きていることが確認できました。人と異なり、麻酔前診断ができないのが動物歯科治療の難しい所です。予後に関しては、病変の消失が理想的ですが、歯の根の先端にできた炎症性の袋(嚢胞)が原因で消失しない事もあり、長期的なモニタリングが必要になります。長期的にみて根尖病変の拡大がなく、無症状なのであればそのまま経過観察となります。もし、拡大したり、症状があるのであれば再治療が必要になったり、歯根端切除術等のより高難易度の治療が必要になります。ですので、初回治療時にしっかりと根管内を洗浄し、感染源を除去する必要があるので治療に時間がかかってしまいます。 Er.YAGレーザーによる根管洗浄法は、従来の洗浄方法よりも優れた利点があります。レーザーを用いる事で根管の複雑な部分や象牙細管の奥に潜む細菌の塊(バイオフィルム)を効果的に破壊・除去することができ、従来の洗浄法では到達しにくい部位への洗浄液の浸透を促します。また、スメア層(根管の切削によって生じる削りかす)は、根管の密閉を妨げたり、細菌の温床になったりしますが、レーザーを用いることでこの層を効果的に除去できます。これらレーザーによる物理的な効果により、消毒液が根管全体に行き渡り、殺菌効果が高まります。 2025年9月現在、道内でEr.YAGレーザーにより根管洗浄(LAI)が行える動物病院は当院のみです。 |
※治療当時の費用であり、病状や処置内容により費用が異なる場合がございます。
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