8月に入ってから年末にかけて技術力向上の為の実習参加や学会、症例検討会への参加等で休診日が多くなり、皆様には大変ご迷惑をおかけいたします。

先日も東京にて日本獣医歯科学会主催のスケーリング実習に参加してきました。
いまさらスケーリングですか?と思われてしまうかもしれませんが、基礎を学び直すことで新たな「気づき」を得るきっかけにもなり、非常に有益な1日でした。
更に丁寧なスケーリングが行えるようになったと自負いたします。

そして、9/6(土)~7(日)は、東京で歯科医師の方々に混じって豚の顎を使った歯周外科実習に参加していきます。

歯周外科とは何でしょうか?

歯周外科とは、歯周病が進行し、通常の歯周基本治療(歯石除去など)だけでは改善が見られない場合に行われる外科的な治療法です。
歯周病によって破壊された歯周組織(歯ぐきや歯を支える骨など)を修復し、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)を浅くすることで、歯周病の進行を食い止め、口腔内の健康を取り戻すことを目的としています。

歯周外科の主な種類
歯周外科には、主に以下のような種類があります。

◆フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)
 歯ぐきを切開し、めくり上げて歯根を露出させ、目視で歯石やプラークを徹底的に除去する手術です。
深い歯周ポケットの奥にこびりついた汚れをきれいに取り除くことで、炎症を改善し、歯周ポケットを浅くします。
最も一般的に行われる歯周外科手術の一つです。

◆歯周組織再生療法
歯周病によって失われた歯ぐきや歯槽骨(歯を支える骨)を再生させることを目的とした治療法です。

・GTR法(組織再生誘導法):
→特殊な膜を設置して骨が再生するスペースを確保し、歯周組織の再生を促します。
・エムドゲイン法・リグロス法:
→歯が生えるときに必要なタンパク質や成長因子を患部に塗布し、歯周組織の再生を誘導します。

歯周形成手術
歯周病によって歯ぐきが下がってしまった部分に対し、他の健康な歯ぐきの組織を採取して移植し、見た目を改善したり、歯根の露出を防いだりする手術です。

・結合組織移植術(CTG)
・遊離歯肉移植術(FGG)
→歯周病などによって歯肉が下がってしまった部分に、健康な歯肉を移植、または再生を促すための外科的な歯周形成手術です。

歯肉切除術
炎症によって増殖した歯肉そのものを切除し、歯周ポケットを浅くする手術です。
プラークコントロールをしやすい口腔環境に整えることを目的とします。

これらの術式は、人医療で実際に行われているものです。

当院でもフラップ手術、歯肉切除術などは歯科処置の際に行っております。
歯周組織再療法であるGTRは動物では難しい為、歯科専門病院ではリグロス法による歯周組織再生治療が行われる事があります。
ただし、エムドゲインやリグロスは人用に認可承認をうけた薬剤であり、動物用に認可・承認を取っていません。
獣医師が当該製品を使用するには様々な制限があり、獣医師の責任による未承認薬の使用という事を前提とした治療法になります。
そして、これらの治療を行うにはしっかりとした基礎知識と歯周外科ができることが必須となります。
(※道内においてエムドゲインとリグロスを、獣医師が医療ディーラーから購入する事が残念ながらできません。)

当院の獣医師は、過去に歯周外科に関する実技講習を受けており、日々研鑽しています。
しかしながら、全症例で歯周外科をしているわけではないので、定期的に再学習していく必要があります。
下の写真は、過去に豚の下顎を使った歯周外科実習中の様子です。
毎回グロテスクな写真が多く、blogを見ていいただいている皆様には大変恐縮です。

歯科医師で歯周外科を行う人たちにとっては馴染のあるもので、こうやって歯周外科の技術を身につけていきます。
札幌に来る前、眼科を専攻していた時代には、豚眼を使って角膜の手術や白内障の手術練習をしたことがありますが、歯科領域でも豚のお世話になっております。
豚は食肉以外にも、様々な臓器が医療界において技術力向上の為の場を提供してくれている非常に貴重でありがたい存在なのです。

9月と10月は、病院を休診にして歯周病専門医・認定医から豚8頭を使って合計24時間にもおよぶ歯周外科技術の反復トレーニングをしてまいります。

9月以降は学会等の色々やることが多くブログの更新作業が鈍化します。