2024年2月末に新しい医療機器である手術用マイクロスコープを導入しました。
各社のマイクロスコープのデモ等を行っていた関係で注文する時期が微妙な時期(スエズ運河問題)になってしまい、納期が予定よりだいぶ遅れてしました。治療を数か月待っていただいた患者様にはご迷惑をおかけいたしました。

マイクロスコープとは、手術用顕微鏡のことで肉眼と比較して数十倍まで視野を拡大することができる医療機器です。当院では導入したマイクロスコープはカメラで有名なLEICA製のもので総合倍率40倍まで拡大可能です。

主な用途として歯科施術に導入しましたが、一般手術にも用いることができます。
年々老眼が酷くなってしまってきているので、拡大鏡下での手術は非常にやり易いです。手術による首や背中への負担がすごく減ったので獣医師寿命がかなり延命されました。毎月の身体の歪みを矯正するための通院の必要性がなくなりそうです。
いままで手術用ルーペを使ってやってきましたが、もうこれがないと手術できません。尿管や血管吻合が安全かつ正確に行うことができます。お世話になったルーペさんは診察・処置用に格下げされました。

顕微鏡下での手術というと脳神経外科や眼科のイメージがありますが、ご存じの方も多いとは思いますが歯科もマイクロスコープを用いて施術する時代です。むしろないと困る時代に突入しております。

今回、新しい医療機器を導入するにあたり動物病院における道内初上陸には残念ながらなれませんでした。2番目でした。残念ながら道内1番目は達成できませんでしたが、最初に導入した病院はノーマルタイプ、当院は180度鏡筒仕様+エルゴオプティークというオプションをつけての導入になり、これは動物病院としては道内初です!そこはちょっとしたこだわり…


ノーマルタイプはレンズが短い為、のぞき込む角度が前のめりなってしまい、首背中に負担がかかってしまい、かつ、斜めから視野をのぞこうとすると自分も斜めに傾むく必要性があり、体にすごく負担がかかってしまいます。アラフィフの私にはもう無理です。

まぁ、どれだけ良いものを導入しても使いこなせなければ意味がありません。
手術がない日には、マイクロスコープを使って日々研鑽しております。
この機器は4Kで術中動画を撮影することができるので、術後に飼主様への病状説明を行う際に大変重宝させていただております。

因みに、顕微鏡とマイクロスコープの倍率とは考え方が異なり、同じものではありません。
顕微鏡の場合は、倍率の計算方法が下記の通りになります。

光学倍率=(対物レンズの倍率)×(接眼レンズの倍率)

つまり、対物レンズの倍率 10倍 × 接眼レンズの倍率10倍であれば光学倍率は100倍になります。
対物レンズとは、覗く標本に近い方のレンズの事で、接眼レンズとは眼に近い方のレンズの事を云います。

マイクロスコープの倍率は総合倍率というものになります。

総合倍率の考えた方は比較的単純なもので、1mmの対象物がモニタ上で10mmになっていれば「10倍」、1mmが40mmになっていれば「40倍」です。ものすごく理論やら何らやを省いて分かりやすく表現すると、「総合倍率40倍≒光学倍率20倍」といった感じです。

なので、当院で使用しているマイクロスコープは最大約20倍まで拡大して施術を行うことが出来ます。

では、このマイクロスコープの普及率は人の歯科医療ではどの程度普及しているかというと、国内では凡そ5~10%と推定されています。出荷台数は年々増えているとのことですが、1施設で複数台のマイクロスコープを導入している所が多い為、見かけ上の出荷台数は増えているが、歯科医院全体でいうと5-10%程度と普及率は数年前と比較してもあまり変わっていないようです。

保険適応できるものは国が定めた一部の治療に対してのみで、すべての処置に対しては適応されません。その為、マイクロスコープを使用する場合、自費診療になるかマイクロスコープ費用を患者様に請求しないかのどちらかになってしまうようです。なので、導入をしていない施設が多いのだと思います。動物病院は自費診療になりますので、国からの規制はありません。

今の時代、歯科用CT、マイクロスコープ、CAD/CAMまたは口腔内スキャナーが歯科医院における三種の神器と云われています。

私も虫歯治療で根管治療(いわゆる歯の神経を抜く)をした際、裸眼で保険適応で行ってもらったことがありましたが、その1年後には根尖部における骨吸収(感染により炎症が原因)を起こして痛みがとれず、マイクロスコープがある歯科医院にて精密根幹治療をして完治した経験があります。
肉眼による等倍下と10数倍に拡大した下では明瞭に治療成績の差がでます。
因みに、その事がきっかけで歯科治療に興味を持ち、動物歯科診療をもっとしっかりとやっていこうと意識するようになりました。
ラバーダム防湿もその時に初めて行われ、それがどれだけ大切な事なのかも知りました。

こんなことを云うと怒られてしまうかもしれませんが、私はマイクロスコープがない、虫歯治療や根幹治療でラバーダム防湿をしない歯科医院では治療を受けたくありません。
ですので、歯科医院をお探しの場合はマイクロスコープの有無等もしっかりと確認するとよいです。

こんな偉そうなことをいって、「お前は何も出来なじゃないか!」と云われないよう日々研鑽しております。

犬の頭蓋骨を輸入し、それを使って切歯・犬歯・臼歯に対する根幹治療や破折に対するレジン修復技術も日々研鑽しております。
また獣医師ではありますが、歯科医師からも直接レクチャーを受ける機会がありますので、そういうセミナーや実習等にも積極的に参加してまいりますので「動物病院の歯科治療=抜歯」というイメージをどんどん払拭していきたいと思います。

因みに、当院は歯科専門病院でありません。
ですが、専門病院レベルの治療を行っていきます。
数年前から歯科治療には力を入れてきましたが、マイクロスコープが導入されたことによりやっと抜歯以外の治療を提供できるようになったと思います。
導入して間もないですが、すでに専門病院でしか行っていない歯内治療も複数件実施しております。

度々、平日・土日に病院が臨時休診になってしまうことがありますが、より高度な専門知識と技術習得の為に修行に行っておりますので、ご理解の程を宜しくお願い致します。

今後、マイクロスコープを使った症例報告をこちらでどんどんしていきますので、気長にお待ちください。