春が近づいて来ました。あと1ヶ月もすれば狂犬病予防注射期間に突入し、また慌ただしい日々が始まります。

さて、今回は、最近よく見る機会が増えてきた「メディカルトリミング」と云う言葉のうたい文句についてです。

そもそもメディカルトリミングっていったい何なのでしょうか?

誰かが勝手に言い始めた造語なので特に意味はありません。調べた限り…

勝手に解釈すると、獣医師とトリマーが連携して、その個体のおかれている状態を正確に把握し、個々に適したトリミングサービス(シャンプーやコンディショナー、保湿剤等の選別etc.)を提供する業態と思われます。

つまり、いままで動物病院で行われていたトリミングサービスを格好良く言い換えたようなものです。

高齢犬や持病がある為に一般的なサロンでは引き受けてくれない動物たちを管理しながらトリミングを行ってあげることは、こんな言葉が生まれてくるずっと前からやってきたことなので、なぜ今更、格好良く言い換えるのかはよく分かりません。

いきなり話しは逸れますが、普段我々が使っているトリミングという言葉は、本来「様々な技法を用いて被毛を整える技術の事」を差しており、シャンプーや耳掃除・爪切り・肛門腺絞りといった基本サービスとカットを含めた行為は、グルーミングと呼ぶようです。ただ、一般的にはグルーミングよりトリミング、グルーマーよりトリマーの方が日本では普及してしまっているので、そういう言い方になっているようです。

本題に戻りますが、上述したように心疾患や呼吸器疾患、皮膚病など健常ではない犬や猫たちを獣医師がしっかりと状態把握した上、動物病院で行うトリミングサービスのことを指していた言葉だったはずなんですが、最近、流行なのか動物病院以外でも使われるようになってしまいました…なぜでしょう?

ここ数年各社からマイクロバブル発生装置や炭酸浴、オゾンシャワーなど様々な機器が登場し一気に普及してきました。どうやら、それらを用いてトリミングサービスを行うとメディカルな施設ではなくても、それをメディカルトリミングと云うみたいです。聞くところによると一部の業者がそう説明しているようです。

それらの機材はあくまでトリミング/グルーミングを行う上での付加価値であり、勿論、治療目的で使うこともありますが、それ単発で良くなるものではなく、様々なものを組み合わせた結果、相乗作用が働いて良い結果が生まれます。

皮膚の状態は数日~週間単位で常に変化していますので、ずっとそれをやっていたからといって必ずしも良くなるとは言えません。今まで問題なくても、ある時を境に急に悪くなる個体もいます。皮膚のコンディションが悪くなっていた為に起きた状態ですが、ぱっと見で分からないこともしばしば….

そういう場合は、その時点での皮膚の状態にあったシャンプー剤に変更したり、皮膚の状態がかなり酷い時はシャンプー剤を用いず、湯洗にとどめておく等々、臨機応変な対処が求められます。

そういった専門的知識がない施術者や施設では、いくら高額な機材や高級(と云われる)シャンプー剤を使ってサービスを行ってもメディカルにはなり得ません。

ただ、残念なことに獣医師も個々人で知識やスキルに大幅な差があり、たとえ動物病院であっても、ちゃんとしたメディカルトリミングが出来ているかと云われると、出来ていないというのが現状です。昨年は、そういったシャンプーがらみの皮膚疾患で当院に転院されてきた患者様が多かったです。数ヶ月前から間違ったスキンケアを行われ、ボロボロになった皮膚の状態を診た時は、どうしたものかほとほと困り果てましたが、適切な対処で何とか改善しましたのでほっとしております。

皮膚のバリア機能は状態によりますが、すぐには治りません。早くても1~2ヶ月の時間を要しますので、その間は頑張って通院していただく必要があります。

結局、何が言いたいかと云いますと、言葉や見た目に騙されず、実際に体験してみて、それがその個体にあっているのであれば、それで良いのですが、万が一、それが合っていないかもと疑問の思った際はそのままにせずに、早めにトリマー/グルマーさんや獣医師に相談してください。

メディカルトリミングという言葉を前面に押し出して集客する行為を私は否定しませんが、それをやるならばしっかりとやっていただきたいと切に願います。当院は、その言葉を使用しません。

これらの内容はあくまで私個人の見解でありますので、不快に思われた方がいましたら、ただの戯れ言と読み流してください。

因みに、当院でもトリミングは行っておりますが、トリミングのみのサービスは行っておりません。

かかりつけ病院として、その個体の健康維持を目的に行う付加価値サービスの一環(ウェルネス)として施術させていただいております。その為、当院にカルテのない方、またはカルテはあるがかかりつけ病院となっていない方のトリミング予約は受け付けておりません。また、トリマーが1名の為、作業をするのに保定が必須な個体(獣医師が介助が必要と判断した個体以外)はお受けすることができません。

ご理解の程、宜しく願い致します。