7月下旬にもかかわらず、札幌は毎日、朝と夕は肌寒く、日中も少し暑い程度の安定した気候が続いております。

そのおかげで計画停電も現時点では実施されず、診察への影響もなく、ほっとしております。

今回は、膣にできるポリープ(腫瘍)についてです。

皮膚などの体表にできる腫瘍と違い、一般的に小さな内から触って分かるものではなく、ある日突然気がつく事が多いのが、膣にできるポリープです。

その理由は、ポリープは膣内で形成されるため、普段は目につくことがない場所であり、小さい場合は膣外へ出ることがまれで、大きくなってそれが膣外へ飛び出てきた時に初めて分かるからです。

特に排尿や排便時のいわゆる「力む」後に、ぽろっと出てくる事が多いようです。

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出てしまったものは、基本的に洗浄して膣内へ押し戻しますが、100%出てしまいます。ですので、ここまで大きくなってしまった場合は外科的に切除する必要があります。

ちなみに、外陰部や膣に形成される雌犬におけるの生殖器腫瘍としては、線維性または平滑筋を起源とする良性腫瘍が一般的に多いといわれています。

良性腫瘍として、平滑筋腫や線維腫、ポリープなどがあり、発生頻度が高いのは平滑筋腫です。

これらの腫瘍発生要因として、エストロゲン(女性ホルモン)が関与しているといわれています。

その為、卵巣摘出(避妊手術)していない雌犬に多く発生し、卵胞嚢腫やエストロゲン産生卵巣腫瘍等と合併している場合が多いです。不妊手術をしている雌犬で膣ポリープができたという症例は、私はまだ経験がありません。

膣にできる腫瘍は、良性ばかりではなく、悪性も発生頻度は少くないのですが、存在します。

一般的に見られるものとして、平滑筋肉腫や扁平上皮癌があります。これらは悪性のため、周辺組織への強い浸潤性でを示し、血液あるいはリンパ管を介して遠隔転移を起こします。

これらの治療は、膣に形成されたポリープを麻酔下で切除します。また、再発防止の意味合いから卵巣・子宮を同時に摘出することが多いです。

会陰部を切開し、視野を確保しポリープを切除していきます。私は止血も併せて行える電気メスで切除してます。

時折、尿道口の近くにポリープが形成されることもあるので、その場合は尿道にカテーテルを入れて尿道を損傷させないような配慮をする必要があります。

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ポリープは通常、単発であることが少なく、多発していることが多いです。

基本的には大きく成長しているポリープのみを切除し、小さなものまでは取りません。同時に卵巣・子宮摘出術を行えば再発を抑制出来ますので・・・。

ただし、卵巣・子宮摘出術を行わない場合は、小さいものもなるべく取るようにはしております。

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高齢で不妊手術をしていないワンちゃんは、膣にポリープが形成されている可能性がありますので、注意深く見てあげて下さい。ポリープを発見した場合は、引っ張らずに病院を受診して下さい。