今夜は雨の影響で湿度がとても高く、かつ無風のため、北海道にしては非常に蒸し暑い夜を迎えております。

北海道の夏は短いので、それに合わせて少し道内観光をしたいのですが、休診日に講習や実習に行ったり、入院治療を行ったり、継続診察したりと時間が取れるかはなはだ疑問であります。

時間がとれたら、北竜町の「ひまわり」を見に行き、癒されたいと思ってはおります。

さて、今回は、肺にできる腫瘍についてです。

肺腫瘍とは肺にできる腫瘍の総称であり、原因によって原発性と転移性の2つに分けることができます。

基本的には、肺に出来る腫瘍の殆どが悪性(癌)です。個別の腫瘍については、長くなるので省きます。

転移性は肺以外の組織にできた悪性腫瘍(癌)が血流を介して肺へ遠隔転移(腫瘍細胞が最初に発生した場所とは異なる場所へ移動し増殖した状態)してきたもので、原発性(発生した場所にある細胞由来の腫瘍)とは異なり肺野全域に腫瘍細胞が散在してみえます。下の写真のように、円形状の大小の塊として見えます。

原発性も基本的には悪性であることが多い為、所属リンパ節(胸の中にあるるリンパ節群)に転移することもあります。レントゲン上の見え方としては、転移性とは異なり、大きな塊として確認されます。下の写真は仰向けの写真ですが、心臓を中心に10時から12時の領域に大きな塊があります。

この写真の腫瘍のように胸壁に隣接している場合は、経皮的に細胞診や生検を行うことができ、腫瘍性か非腫瘍性かの判断ができます。そして、腫瘍であれば、単発で孤立性であり、かつ転移兆候もみられないものであれば肺葉切除による摘出が有効です。

肺腫瘍は実に厄介で、初期の頃は症状(咳や呼吸困難など)を伴わないので発見が遅れることが多いです。レントゲン上でも直径5mm以上にならないと判別が難しく、聴診しても異常な音を発しません。

その為、症状を伴っている場合には、だいぶ進行している事が多く、状況によっては手の施しようがないくらい悪い状態で見つかることもしばしば…

通常は咳が頻回にみられたり、安静時の呼吸数が40回/分以上になっていることが多いのですが、これらの症状は肺腫瘍に限らず、肺炎や肺水腫、気管支炎などの呼吸器疾患全般にいえる症状なので、その症状がある「=」肺腫瘍があるという訳ではありません。

最後に、経過をみすぎてしまったが為に、来院時には手のつけられない状態だったという症例を紹介します。

肺のほぼ全域が腫瘍で占拠されており、重度の呼吸困難を呈しておりました。末期症状なのですが、このような状態であっても病院に来院する数日前までは食欲や元気はいつもどおりで、呼吸の回数も最近早いかな程度だったようです。生命力の強さに脱帽します。

このように症状がかなり進行しないと気がつかない場合も多く、健康診断や麻酔前検査などで胸部のレントゲン写真を撮った際に偶然みつかる事もあります。

勿論、咳や呼吸回数が早いといった症状がある場合は、鑑別のために胸部レントゲン検査は行いますが、全てケースで腫瘍等の病変を発見できるわけではありません。

人の方でも健康診断で胸部レントゲンを撮るよりも、被爆率は高いのですがCTの方がレントゲンでは写らない小さな病変を早期に発見できると云われております。

さすがに、動物医療では健康診断でのCT撮影は現実的ではありません(麻酔が必要、費用も高額等)。

しかしながら、精度は劣りますがやはり胸部レントゲン撮影は有効的な手段と考えます。

身体検査や血液検査、尿検査だけでは発見ができない病気も多数あることから、中高齢の場合、健康診断を行う際は一緒にレントゲン検査もお勧めいたします。