犬や猫の食事生活の中で絶対に与えてはいけないものというものが多々存在します。

その中で一番多く誤食されやすく、飼主様の認知度も高い食べ物として「玉ねぎ」があります。

「玉ねぎは与えてはいけない」という情報だけはご存じの方が多いのですが、なぜ与えてはいけないのかまでは知らないという方もたくさんいます。

今回は、与えてはいけないものシリーズとして「玉ねぎ中毒」について触れたいと思います。

インターネットの普及で「玉ねぎ中毒」で検索をするとたくさん情報が出てきますので、すでにご存じの情報も多々あるかと思いますが、知らなかった方のために化学的反応うんぬんは省いた解説にいたします。

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玉ねぎは、ネギ属(学名:Allium )に所属する植物で、ユリ目ユリ科またはアスパラガス目ネギ科に分類されます。このネギ属に含まれる食物として、玉ねぎ以外にネギリーキニンニクニララッキョウ等があります。

このネギ属に含まれるアリルプロピルジスルフィド(allylpropyldisulfide)、ジアリルジスルフィド(diallyl disulfide)などが赤血球やヘモグロビンを酸化させることで、血液が溶けてしまう「溶血」という病態を起こし、その結果、溶血性貧血が起きてしまいます

因みに、これらの物質は加熱調理してもその毒性が消えることはありません玉ねぎそのものを食していなくても調理した際に成分が玉ねぎの外に溶けだしている為、それらの煮汁または付着した食材を食べても玉ねぎ中毒は起こってしまいます

また、赤血球の中にはカリウムという電解質成分が含まれておりますので、もし大量に溶血した場合は、同時に大量のカリウムも血管内に放出されることになり、その結果として致死性不整脈を起して死亡してしまうこともあります。遺伝的にカリウムを多くもつ赤血球(hk型赤血球)を有する犬種(柴犬等)が存在しますので、要注意です。

玉ねぎ中毒の主症状は「貧血」です。貧血が起きた結果、可視粘膜蒼白(通常ピンクなのが白っぽくなる)や黄疸(皮膚や血清、可視粘膜が黄色くなる)、血色素尿(麦茶色、ワイン色の尿)を起こします。急激な貧血の結果、食欲や元気もなくなり、酸素を運ぶ赤血球が少なくなるため呼吸も苦しくなり、ぐったりします。

ただ、玉ねぎをどれだけ食べたら溶血が起きるのかなどの明確な中毒量は分かりません。溶血が起こる原因としては、赤血球が単に酸化するだけではなく、様々な遺伝的な要素も絡んでくるためです。ですので、少量でも激しい溶血がおこることもあれば、玉ねぎを1個食べても無症状な場合もあります。中毒症状は摂取後、数時間で起きることもあれば数日を要することもあります

何にせよ無症状だから様子を見ようというのは危険です。もし、誤って食べてしまった場合は、量にかかわらず、まずは吐かせる処置を行う事が適切だと思います。また、酸化が主な原因ですので、ビタミン剤などの抗酸化物質の投与もある程度は効果が期待できます。貧血を伴わない慢性的な摂食は肝機能を低下させますので、絶対に与えないください。

玉ねぎだけではなく、上述したネギ属に属する食べ物は与えないでください

人が食事を摂るときは、事故防止のために犬はなるべくサークルやケージに入れてもらい、食事や後片付けが終わった段階で出してあげるようにしてください。そうすることで人の食事を誤食してしまう危険性を減らすことが可能です。犬とって人の食事は犬用の餌よりも味が濃く、美味しくて非常に魅力的な食べ物なのです。