外耳炎についてのお話です。

耳介から耳の穴までを外耳、耳の穴から鼓膜までのことを外耳道と呼びます。

外耳炎とは、外耳または外耳道にカビや細菌が感染し、炎症を起こした状態のことを言います。

人とは異なり、犬の耳は耳道の形が「L字」型を呈しています。場所により垂直耳道水平耳道と名前がついています。人よりも耳道が長いのです。

一般的に外耳炎と診断される場所としては、耳介部~垂直耳道にかけてです。

原因は様々ですが、耳毛の多い犬種や脂漏体質の犬種などは耳道内の通気性が悪いため、細菌やカビなどが繁殖しやすくなっているため、発生頻度は他の犬種と比べると多くなります。夏場に多くみられる病気の1つです。

外耳炎

外耳炎の症状は、主に痒みや赤み、痛みです。その為、耳が正常な耳と比べて垂れさがったり、耳や首をふったりします。痒みがひどい時は、後足で耳を引っかいたりするため傷つけて出血することもしばしばです。

急に耳垢が増えたり、赤みや痒みがひどく、独特の悪臭を伴う場合は外耳炎(細菌または酵母による感染)を呈している事が多いので検査および治療が必要になります。

その中で、比較的よく見かける外耳炎として「マラセチア」という酵母菌が原因で起きる外耳炎があります。

マラセチアとは「Malassezia pachydermatis」という非菌糸形成性の酵母菌のことです。ちなみに、この酵母菌は一般的に外耳道やその他皮膚に常在しており、外部から感染してなるわけではありません。日和見感染の一種で、免疫力が落ちたり、皮膚炎などにより本来皮膚が持っているバリア機能が壊れたときなど、様々な原因によって酵母菌が増殖した結果、悪さをして症状がでてきます。

脂を好む傾向がありますので、脂漏症の犬では耳以外の他の皮膚にも症状が見られます

このマラセチは独特の形状をおり、楕円形からひょうたん型であることが多いです。診断は簡単で、耳垢の押捺標本やセロテープ法などで採取したサンプルを染色することで評価します。

マラセチア

ちょうどこんな感じの形をしています。ダルマやボーリングのピンみたいな形ですが、私的にはマトリョーシカ人形にみえます。

治療は、炎症が強い場合は掻き壊し防止のために消炎剤(ステロイド)を使いますが、基本は耳洗浄と抗真菌剤(細菌感染を伴う場合は抗生剤も)にて治療します。

最近の外耳炎治療薬には、消炎剤のほか、抗生剤、抗真菌剤が入っているものがあるので大抵はそれを用いて治療していきます。

症状がひどい場合(痛みがひどい場合)は、洗浄せずにまずは外用薬(塗り薬や点耳薬など)と抗真菌剤などの内服薬にて症状を軽減させてから、後日に洗浄処置をすることがあります。

抗真菌剤には国内で入手できるものと海外でしか入手できないものがあり、国内で入手できる薬はやや高価です。海外薬は比較的安価なのですが、入手する手間がかかります。

ちなみに、この薬は肝障害や食欲不振などの副作用を伴うこともありますので、常備薬的に使用することはできません。

やはり日ごろからの手入れが重要になります。ただし、綿棒などで耳掃除するときは耳の粘膜を傷める場合がありますので注意が必要です。できればペットショップや病院などで販売しているイヤーローションを使って乾綿などで拭いとる方がよいと思います。

自宅での日常ケアで改善しない場合は、ひどくなる前に早めの受診をお勧めします。