本日は、犬や猫における不妊および去勢手術の目的についてです。

近年においては、様々な情報紙やインターネット等を使い病気や症状についての情報を簡単に調べることができるようになりました。ですので、同じようなことが書かれていると思いますが、あえて不妊・去勢手術についての情報をこの場で提供したいと思います。

不妊や去勢手術は、もともと望まれない妊娠による不幸な動物を増やさないために行われていた手術です。

雄では精巣を摘出(去勢手術)、雌では卵巣および子宮を摘出(不妊手術)します。これらの手術を行うと、永久的に妊娠すること(させること)ができなくなります。

ただ単に、望まれない子犬や子猫を産ませたくないのであれば、雌が発情している時期、つまり交配によって妊娠する可能性がある特定の時期だけ隔離しておけば、その目的を達することができる為、健康な犬や猫にあえて麻酔をかけて手術をする必要はないのかもしれません。

しかしながら近年においては、不妊および去勢手術は、従来の「望まれない妊娠を避けること」よりも、将来的に起こる可能性のある性ホルモン関連性疾病を予防すること、また性ホルモンによって誘発される発情徴候(出血や鳴き声)やマーキング(スプレー)行動、発情時における攻撃性やマウンティングなどの性行動に伴う問題行動を防止(軽減)することに重点がおかれるようになりました。

特に雌においては、ある発表によると初回発情前に避妊手術を行なうことで手術をしていない個体と比較して乳腺腫瘍になる確率が0.05%程度まで下げる事ができます

0ではありませんが、限りなく乳腺腫瘍になる確率を減らすことができます。

初回発情を過ぎると、発情を迎えるたびに発生率が高くなっていきます。その発表によると2回目は8%、2回目以降は26%にまで確率があがるといわれています。年齢にすると2.5~3歳を過ぎての不妊手術は、乳腺腫瘍の予防効果はないともいわれています。

しかしながら、あくまで確率の問題ですので手術をしていないからといって、必ずしも乳腺腫瘍になるとは限りません。

ただし、その場合、ある程度高齢になってから見つかることが多いので、当然ながら麻酔に対するリスクや負担も上がります。また、乳腺腫瘍が認められる場合、かなりの確率で卵巣・子宮にも異常を伴っていることが多いです。ですので、乳腺腫瘍の手術をする場合は、同時に卵巣・子宮摘出手術も行わなければなりません。

ちなみに、犬の場合は、乳腺腫瘍は良性・悪性の確率は50%程度ですが、猫の場合は殆どが悪性です。

猫ちゃんにとっては、早期に不妊手術をする・しないで予後が大きく変わってきます。

予防効果としては、ある発表では生後6カ月未満での手術の場合、予防効果が91%、6~12カ月では86%、12~24カ月では11%と言われています。

内容が少し偏ってしまいましたが、不妊・去勢手術を行う目的が少しはお分かりいただけましたでしょうか?

「自然なままが良いと考えている」、「病気でもないのに手術するのはかわいそう」という飼主様も少なからずいらっしゃいます。

しかし、何のために行い、どうしてそれが必要なのかをご理解いただければ幸いです。

「将来起こりうる病気に対する事前の予防」、これが一番大切だと考えております。

病気になってから治療するのではなく、病気にならないようにしてあげることが長生きの秘訣の1つです。

手術には当然ながらリスクもありますし、費用もかかります。そして、強要されるものでもありません。

より正確な情報を知った上で、何が一番よいのかを選択していただければ幸いです。

次回は、「不妊・去勢手術のメリット・デメリット」についてお話します。