2週間ぶりに札幌でまとまった雪が降り積もり、久しぶりに除雪作業を行いました。

前回の歯肉炎・歯周炎の続きです。

今回はステージ分類による処置・治療に関してです。

Small Animal Clinic No.196 2019 Oct号 P.5より画像引用

歯の状態を見ただけでもおおよそ分かるとは思いますが、見た目と歯周病の重症度は比例します。

ステージ1の歯肉炎ですが、軽度の歯石沈着とアタッチメントロスを伴わない歯肉部の炎症です。

治療に関しては、一般的なホームケア、または歯肉縁上スケーリングで行います。

ステージ2の初期歯周炎は、中程度(歯全体の1/2以上)の歯石沈着と軽度のアタッチメントロスを伴っている状態です。歯周ポケットがない、またはあっても3~5mmの軽度な状態です。

一般的な歯周ポケットの深さですが、小型犬では1~2mm、大型犬では3mmまでが正常範囲内と言われています。

治療に関しては、一般的なスケーリングに加え、歯周ポケット内の歯石に対して歯肉縁下スケーリング、またはルートプレーニング※1が必要になります。

※1ルートプレーニング:
汚染された歯根(ルート)の表面を、キュレットという器具を使って削り取り、滑らかに(プレーニング)する治療のことです。

概ね、我々が歯科処置を勧めるのはこの時期になります。そして、比較的飼主様からの了承が得られやすい状態でもあります。

ステージ3の中程度歯周炎は、ステージ2よりも更に進行した状態です。歯をほぼ全域歯石で覆われてしまい、かなりの口臭も伴います。アタッチメントロスも25~50%と深く、歯槽骨吸収が起きています。その為、歯周ポケットも5mm以上と深く、プロービング検査を行うと出血することが多い状態です。

治療は、スケーリングとルートプレーニングに加え、キュレッタージ※2やフラップ手術※3が必要となります。歯の動揺がひどかったり、アタッチメントロスが50%程度であったり、歯周組織の大半が欠損していたり、飼主によるホームケアが行えない等の状況を鑑みて、その歯を温存することが難しいと判断した場合は、抜歯を行います。

※2キュレッタージ:
歯周ポケットに面する歯肉の炎症部分 (上皮と炎症が強い結合組織) を掻爬除去する方法です。

※3フラップ手術:
歯肉を切開して、歯周ポケット内に深くまで入り込んだ歯垢や歯石などを取り除き、再び、歯肉を縫合する手術です。

ステージ4は、見た目からも分かる通り、歯周組織の大半が損なわれていることから歯を温存する事がほぼ不可能のため、抜歯での治療が主体となります。この際、トイ種などの小型犬の場合、抜歯の際に下顎骨が骨折する恐れがある為、事前に下顎骨の評価をレントゲン検査で行うことが必須になります。

最近、当院で行っている歯科処置の大半は、このステージ4なのです….

処置には3~5時間程かかるので、その分、麻酔時間も長くなり、身体的負担も治療費用も大きくなります。

ですので、ステージ1、または、最低でもステージ2の段階での予防歯科処置を強く推奨している次第です。

ただし、ステージ1であっても全身麻酔下での処置になりますので、日頃からのホームケアは大切です。

次回は、歯周病シリーズの最終回?です。事前に悪くなるかどうかの判断を行う便利なツールに関してです。