繁忙期が終わり、込み入った手術とその入院管理も落ち着き、一息つける時間がとれるようになった今日この頃、やっとブログに割く時間を取ることができるようになりました。

さて、先日、法案が可決され3年以内に実施予定の愛玩動物看護師法の詳細です。可決された法案をまとめてみました。
詳細は参議院の公式Webサイトに成立された法律のPDFがありますので、興味のある方は全文を御覧ください。

『愛玩動物看護師法』

○目的(第一条 )
この法律は、愛玩動物看護師の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もって愛玩動物に関する獣医療の普及及び向上並びに愛玩動物の適正な飼養に寄与することを目的とする。

○定義(第二条 )
1)この法律において「愛玩動物」とは、獣医師法第十七条※1に規定する飼育動物のうち、犬、猫その他政令で定める動物をいうこと。
2)この法律において「愛玩動物看護師」とは、農林水産大臣及び環境大臣の免許を受けて、愛玩動物看護師の名称を用いて、診療の補助(愛玩動物に対する診療(獣医師法第十七条※1に規定する診療をいう。以下同じ。)の一環として行われる衛生上の危害を生ずるおそれが少ないと認められる行為であって、獣医師の指示の下に行われるものをいう以下同じ。)及び疾病にかかり、又は負傷した愛玩動物の世話その他の愛玩動物の看護並びに愛玩動物を飼養する者その他の者に対するその愛護及び適正な飼養に係る助言その他の支援を業とする者をいうこと。

○免許(第三条)
1)愛玩動物看護師になろうとする者は、愛玩動物看護師国家試験(以下「試験」という。)に合格し、農林水産大臣及び環境大臣の免許を受けなければならないこと。
2)欠格事由(第四条)、愛玩動物看護師名簿(第五条)、免許の取消し(第九条)その他所要の規定を設けること。

次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
1.罰金以上の刑に処せられた者
2.前号に該当する者を除くほか、愛玩動物看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者

3.心身の障害により愛玩動物看護師の業務を適正に行うことができない者として農林水産省令・環境省令で定めるもの
4.麻薬、大麻又はあへんの中毒者

○登録(第五条~第十一条)
免許は、試験に合格した者の申請により、愛玩動物看護師名簿に登録することによって行う。農林水産大臣及び環境大臣は、免許を与えたときは、愛玩動物看護師免許証を交付する。

○試験(第三十一条
試験は、愛玩動物看護師として必要な知識及び技能について行うものとし、毎年一回以上、農林水産大臣及び環境大臣が行うものとすること。次のいずれかに該当する者でなければ、受けることができないものとすること。

(1)学校教育法に基づく大学において農林水産大臣及び環境大臣の指定する科目を修めて卒業した者
(2)農林水産省令・環境省令で定める基準に適合するものとして、都道府県知事が指定した愛玩動物看護師養成所において、三年以上愛玩動物看護師として必要な知識及び技能を修得した者
(3)外国の第二の2の業務に関する学校若しくは養成所を卒業し、又は外国で愛玩動物看護師に係る農林水産大臣及び環境大臣の免許に相当する免許を受けた者で、農林水産大臣及び環境大臣が(1)及び(2)に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定したもの

○業務等
・愛玩動物看護師は、獣医師法第十七条※1の規定にかかわらず、診療の補助を行うことを業とすることができること。(第四十条)
・愛玩動物看護師は、その業務を行うに当たっては、獣医師との緊密な連携を図り、適正な獣医療の確保に努めなければならない。(第四十一条)
・愛玩動物看護師でない者は、愛玩動物看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならないこと。(第四十二条)

○罰則(第四十四条~第四十八条)
罰則に関し、所要の規定を設けること。

○施行期日等
①施行期日
この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、指定試験機関等に係る一部の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。

受験資格の特例
次のいずれかに該当する者は、第三十一条の規定にかかわらず、試験を受けることができる

i)次のいずれかに該当する者であって、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)から五年を経過する日までに農林水産大臣及び環境大臣が指定した講習会の課程を修了したもの

(1)施行日前に学校教育法に基づく大学を卒業した者であって、当該大学において農林水産大臣及び環境大臣の指定する科目を修めたもの
(2)施行日前に学校教育法に基づく大学に入学した者であって、農林水産大臣及び環境大臣の指定する科目を修めて施行日以後に卒業したもの
(3)第二条の2)の業務(診療の補助を除く。)に必要な知識及び技能を修得させる養成所であって都道府県知事が指定したものにおいて、施行日前に当該知識及び技能の修得を終えた者
(4)第二条の2)の業務(診療の補助を除く。)に必要な知識及び技能を修得させる養成所であって都道府県知事が指定したものにおいて、この法律の施行の際現に当該知識及び技能を修得中であり、その修得をこの法律の施行日以後に終えた者

ii)愛玩動物看護師国家試験予備試験(以下「予備試験」という。)に合格した者

③予備試験
1)農林水産大臣及び環境大臣は、試験を受けようとする者が第三十一条(1)又は(2)に掲げる者と同等の知識及び技能を有するかどうかを判定することを目的として、施行日から五年を経過する日までの間、毎年一回以上、予備試験を行うものとすること。
2)予備試験は、第二条 2)に規定する業務(診療の補助を除く。)を五年以上業として行った者又は農林水産大臣及び環境大臣がこれと同等以上の経験を有すると認める者であって、農林水産大臣及び環境大臣が指定した講習会の課程を修了したものでなければ、受けることができないものとすること。
④その他
その他所要の規定を整備すること。

登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
愛玩動物看護師法第六条第一項(登録)の愛玩動物看護師の登録 : 一件につき九千円

※1)獣医師法第十七条とは
 獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。


前置きがとてつもなく長くなってしまいましたが、要約すると新たに国が定めた基準を満たさない人は今後は動物愛玩看護師と名乗らないでね、かつ登録料もとるし、なんか悪いことをしたら違反で罰金を科したり禁固刑もあるよということです。国家資格なので当たり前ですね…。

ただ、受験資格の規定では専門教育を3年以上とありますので、それを満たす学校は、北海道では酪農学園大学のみ(2019.7.27時点)となります。動物看護師の国家資格化を働きかけていた中心人物が動物看護師を養成する初の大学をつくった学園の人なので、まぁ、既定路線というやつです。

道内の専門学校は、すべて2年制なので要件を満たしていません。来年度から3年制に移行するのか、募集を終了して閉鎖するのかなんか不明ですね。それに、今後、道庁から指定施設の認定がもらえるかもわかりません。カルキュラムがどうなるのか不明ですが、現状の教育体制から考えると乱立する専門学校の統廃合はした方がよいと思います。トリマーさんは国家資格ではないので、そのまま継続です。

一応、現役で働いている人に対する救済処置もある(5年間限定ですが)ので5年以上の実務経験者、または指定の講習会修了者であれば受験資格をもらえるということなので、予備試験に合格し、受験資格を得ることも可能とのことです。ただし、予備試験に受かっても本試験が待っていますので、それに合格しないと愛玩動物看護師にはなれません。

個人的な意見ですが、予備試験を受けようと思う人がどれだけいるのか….。
そして、本試験の合格者がどれだけでるのか…簡単すぎれば国家資格の意味がないですし…獣医師の合格率88.3%なんで、それ位はいくのでしょうか?

まぁ、なんにしても早ければ2023年に動物愛玩看護師が生まれることになると思います。

都心部集中で地方には獣医師が来ませんので、獣医師の代わりに看護師がやれる事が増えてくれれば、獣医師は診察に専念できますし、国家資格をとってまで動物愛玩看護師を目指す人は早々に退職しないと思うので、業界にとっては良いのかもしれません。ただし、逆に人的資源の奪い合いになるので零細病院は厳しいかなぁといった不安要素もあります。