以前の告知からこのすごい空白期間がありましたが・・・やっと獣医療情報を更新をします。

写真を変更したり文章を書き替えたり、他の似たような内容のブログもあるので、それとは違ったアプローチに変更したり、新しい知見を組み入れたりと遅くなってしまった理由がありますが、これから少しずつ再開しますので、気長にお付き合いください。

ここ数年の傾向として当院の犬における健診(血液検査)にて発見される異常のNo.1が肝臓です。その次が膵臓、腎臓という感じになります。

若齢犬の去勢手術や不妊手術時における術前検査でも肝臓の数値が高く精密検査になってしまう個体が増えてきています。

個人的には、種特異的疾患を全く考慮しないブリーディングが蔓延しているからではないかと考えています。

また食生活の影響もかなり見受けられます。脂っぽいフードオヤツの与えすぎも原因となっていると思います。

さて、前置きはこの程度にしておいて、本題に入ります。

肝臓疾患の中で比較的よく見つかる病名として胆嚢における「胆泥症」というのがあります。

今回は、その胆泥症をまずはクローズアップします。少々長いので複数回に分けます。

まず、「胆嚢」とは西洋梨のような形をした袋状の臓器のことです。肝臓の一部です。

※ 正常な胆嚢の矢状断面像(背骨に水平になるようなエコー断面像)

※ 矢状面、水平面に関する説明

肝臓で作成された胆汁という消化液を肝臓の隅々から胆管という管を通して集め、そして最終的に総胆管という1本の管になり、十二指腸に入り込み、十二指腸開口部(大十二指腸乳頭)を介して十二指腸管内に流れます。胆嚢はその途中に存在し、胆嚢から派生した胆嚢管と総胆管が途中で合流します。

※肝臓と胆嚢、膵臓、十二指腸のイメージ図(人)

胆汁とは、胆汁酸塩・胆汁色素・コレステロール・ビリルビンが主成分の黄緑色を呈した消化液のことです。この消化液により脂肪酸の消化・吸収を容易にしています。

つまり、脂肪をうまく吸収するための消化の手助けをしてくれる液体のことです。

犬の嘔吐の主訴で「黄色い胃液を吐いている」は正確には胃液ではなく、胆汁が混じった胃液を吐いているという事になります。

胆汁のほとんどは水分なのですが、胆嚢内で一時貯蔵されている間に胆嚢で水分が吸収され、濃縮という作業が行われます。濃縮=胆汁成分が濃くなるということです。

胆汁は肝臓内で24時間365日ずっと作り続けています。常に少量は十二指腸内に流れている状態なのですが、消化の際に必要な量が足りないと上手く栄養を消化吸収できなくなってしまう為、通常、食事をしていない時は胆嚢に胆汁液が蓄え、いざ食事をした時(胃に食物が入った時)に胆嚢の筋肉が収縮して、胆汁を総胆管内に押し出し十二指腸内に分泌されます。その後、また胆汁が徐々に胆嚢に蓄えられて再び胆嚢は拡張していきます。

では、胆泥症とは何なのか?

定義上、「何らかの原因により胆汁が濃縮し変質してしまい泥状になったものが胆嚢内に貯留した状態のことを云い、さらに胆汁の成分が変質し結石状になったものを胆石と云う」となっているのですが、実際、胆泥症の胆嚢内容物を見てみると、形状は様々ですがムチンという糖タンパク質により餡かけ状にドロドロっと変質した胆汁に細かな胆砂が混ざった状態というのが非常に多いです。

※ムチンは、動物性の粘液物質のことで細胞の保護や潤滑物質という大事な働きを持っています。ドジョウとかウナギのヌメヌメがムチンというとイメージしやすいと思います。ちなみに、山芋とかオクラのヌメヌメはムチレージという植物性なので違います。

エコー上でみると西洋梨状の袋状構造の中に正常であれば、黒く映されるところがグレーまたは白くなっている状態を指します。

※ 胆泥症を呈している胆嚢の矢状断面像

ただし、胆泥症と病名をつけるのは実に簡単なのですが、実際の中身が何なのかを診断するのは難しく、その内容物は粘性を増した胆汁液だったり、赤血球(血餅)や白血球(膿)だったり、細胞の脱落物の塊だったり、細かい石(胆砂)の塊だったり、等など様々な状況が考えられます。ですので、画像のみで判断することはなかなかどうして難しいのが実情です。

その為、当院ではあくまで超音波検査上の最初の表現として画像のような病態を「胆泥症」と云っています。その後に補足として、上述したような中身に関する件と実際に胆嚢摘出した時の内容物の画像や動画などを見せて説明をします。

つづく